高齢者の外出意欲を引き出す声かけと乗降介助の実践コツ
2026-10-16
お知らせ
外出を嫌がる高齢者への声かけは「次に何をするか」を先に伝えることから

送迎や乗り降りの場面では、動作を始める前に「今からこの段差を上がります」「右手をお借りします。ゆっくり2歩進んだら座りますね」のように、次に何をするのかを具体的に伝えることを大切にしています。見通しが持てると、ご本人も身体の準備ができ、安心して動くことができます。耳が遠い方には声の大きさを調整し、目線を合わせてからゆっくり挨拶をするなど、お一人おひとりの状態に合わせた声かけを心がけています。手すりやシートベルトを握る手に力が入っているときは、不安の表れと受け止めて一度動きを止めるようにしています。何より大切なのは、ご本人のペースを待つこと。急かさず、同意をいただいてから次の動作に移る姿勢が、外出そのものへの安心感につながっています。
外出を嫌がる理由は何か ― 身体・心理・環境の3つの要因から考える

外出への意欲が低くなる背景には、大きく3つの要因があるといわれています。ひとつは膝や腰の痛み、視力・聴力の低下といった身体的な要因。ふたつめは、配偶者を失った喪失感や転倒への恐怖心といった心理的な要因。みっつめは、近所付き合いの減少や坂道など歩きにくい環境といった社会・環境的な要因です。「最近、新聞を取りに出るのも億劫になった」といった何気ない一言から、心理的な要因が隠れていることに気づくこともあります。送迎時に玄関のドアノブを長く握ったまま動き出さない方の様子から、歩行への不安が先に立っているのではないかと感じ、声のかけ方を変えてみることもあります。「なぜ出かけたくないのか」を決めつけず、まずはご本人に理由をたずね、何が障害になっているのかを一緒に考えることが、意欲を引き出す第一歩になります。
「目的のある外出」が意欲を引き出す ― 買い物やレクリエーションの工夫

外出そのものを目的にすると気が重くなりがちですが、買い物など「目的のある外出」をきっかけにすると、不思議と足が向きやすくなります。以前よく通っていたお店や好きだった食べ物の話を伺う中で、「そこならまた行ってみたい」という言葉が出てくることもあり、会話の中からその方なりの目的を見つけることを心がけています。最初から大きな外出を目指す必要はなく、週1回の短い外出から始め、少しずつ回数を増やしていく段階的なアプローチが効果的です。玄関先の花に水をやる、郵便を取りに出るといった小さな外出を積み重ねることも、外に出る習慣を取り戻す助けになります。
季節の外出レクリエーションと誘い方の工夫 ― スタッフの試行錯誤と利用者の変化

秋の行楽シーズンには、紅葉や各地の伝統行事を楽しむお出かけ企画も提案しています。最初はお誘いしても「今日は行かない」と断られることもありますが、行き先の写真を大きく印刷してお見せしたり、人数を絞って親しい方同士で小さなグループを作ったり、出発前に温かいお茶を一杯飲んでから声をかけ直したりと、試行錯誤を重ねる中で、少しずつ「行ってみようか」という言葉が増えていくことがあります。帰りの車中では、その方が好きだった時代の音楽を流してみると、普段より口数が増えることに気づくこともあります。外出を重ねることで表情が和らいだり、帰りの車内で会話が増えたりといった変化が見られることもあります。こうした変化は、その日の体調や気分によって現れ方が異なるため、無理に期待せず、長い目で見守る姿勢を大切にしています。
週1回の外出が将来の健康維持に役立つと考えられている ― 外出頻度と心身機能の関係
外出頻度と心身の健康との関連を示す調査では、外出の頻度は、一人暮らしかどうかや友人・家族との接触の有無と並び、生活の自立度を見るうえでの指標の一つとして取り上げられており、週1回以上の外出や人との交流を続けることが、将来の心身の健康維持に役立つと考えられています。外出は身体を動かす機会になるだけでなく、気分の切り替えや人との会話の機会にもつながります。無理のない範囲で、少しずつ外出を習慣にしていくことが何より大切です。
本人の意思を尊重しながら外出を促すために家族ができること
外出を促す際にもっとも大切なのは、ご本人の意思を確認し、無理に誘わないことです。気持ちが向かない日は無理をせず、タイミングを待つことも選択肢のひとつです。家族だけで抱え込まず、デイサービスでの運動プログラムや外出レクリエーションのように、第三者と関わる機会を選択肢に加えてみるのもひとつの方法です。玄関先で靴を自分から履こうとする、送迎の時間を気にして身支度を始める。そうした小さな変化が、次の外出への準備が整ってきたサインかもしれません。